第3章 メッセージ分析

ここまで、浅野いにお漫画の感情移入の仕組みについて考えてきた。漫画におけるコマ割や、視線の誘導などのミクロな部分から、登場人物の設定や舞台設定などのマクロな部分まで、様々なこだわりを持って描かれていた。そんな浅野いにお漫画が描くものは、「普通」であり、「日常的」な現実の世界である。

やっぱりこういう“普通”のマンガを描くにあたっては、あまりに参考になるものが多すぎるじゃないですか。俺が生きている現実の話だから、もちろん探せば探すほどいっぱい出てくるわけで、だから自分の外側を探すよりは、自分の内側を探すようにしている(※34)

僕の考えてることなんていうのは他の人とあんまり変わらないです。でも、みんなはそれを隠していてかまわないから、僕はそれを言うよ、一応僕のマンガに描いておくよ、という気持ちなんです(※35)

常に自分の内側を探し、その時々の自分を漫画に描き続けている浅野いにお。今を生きる自分の感じること、考えていることを描いているからこそ、読者にも伝わる。緻密に、時には大胆に感情移入の仕組みを創りあげてきたからこそ、浅野いにおの本気のメッセージは人々に響く。そんな、浅野いにお漫画の伝えてきた数々のメッセージを読み解き、その先にある根底的なメッセージを掴み取っていきたい。そのためには、今を描き続ける浅野いにおだからこそ、掲載年代別に前期、中期、後期と作品を年代別に分け、その時々のメッセージを考察し、それらの中から普遍的な考え方を見つけ出していこう。

脚注

※34 吉田大助(2006)「徹底特集 浅野いにお」『Quick Japan』vol.69:p112
※35 吉田大助(2010)「永遠の浅野いにお」『ダ・ヴィンチ』No.193:p128

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