第1章 / 第2節 / 第2項 時間の連続性

2つ目は、「時間の連続性」である。「会いたくて会いたくて」の冒頭の歌詞から見ていこう。

会いたくて 会いたくて 震える
君想うほど遠く感じて
もう一度聞かせて嘘でも
あの日のように“好きだよ”って・・・

ここから、「わたし」は「君」と過去に別れており、現在会いたいという感情を持っていることが分かる。そして続く歌詞では、「君」には新しい恋人がいることが判明する。これも、会いたいと願う「わたし」と同じ時間軸である現在にあたる。そして、

もう一度二人戻れたら・・・
届かない想い my heart and feelings
会いたいって願っても会えない

と、「わたし」は現在に抱える想いは、未来にも叶わないことを自覚している。さらに、「もう一度二人戻れたら」と、過去へ戻れないことも自覚している。このことから、「会いたくて会いたくて」の物語世界の中に、私達が生きる現実と同じ、過去-現在-未来という不可逆で一連の時間軸が形成されていることが分かる。これにより、「わたし」は、「君」と一緒に過ごした幸せだった過去に思いをはせ、再びその時を取り戻したいと願い続けるが、その願いは叶わないことに悲しんでいる人物だということ、登場する「わたし」が全て同一人物であるということが鑑賞者に容易に理解することが可能であり、「わたし」の抱える悲しみという感情への移入が可能となってくる。続けて、「Loveずっきゅん」の歌詞を見てみよう。

ここ ここ ここはどこ 宇宙
わたし中央線乗り越して気付いた 明日は始業式
にく にく にく 憎らしいあいつのタイムマシンは
時空間ひとっとびにきのうへ消えてゆく

読んで分かる通り、この歌詞では時間の流れが読みとれない。まず、「宇宙」から「中央線」という非日常から日常への流れ、そして、タイムマシンが時空間を超え、「きのう」という過去へと消えていく流れ。いまいる場所も、時間も、あいつも何もかもがこの歌詞だけでは判明しない。この曲では、過去-現在-未来と一方向的に流れる時間軸が成立していないだけでなく、現在から過去へと時間の流れに逆らってもいるのである。さらに、

きみ きみ 君は誰 want you わたし冒険少女
アマゾン帰りの恋するハイティーン
すき すき すき 隙だらけ あいつ発明キッド
欠かさずつけてる秘密のダイアリー

「君は誰?」と問いかけた本人が「冒険少女」だと言うことは分かるが、ここの「わたし」と、前段の「わたし」が同一人物なのかは判断することができず、「君」が直前に登場したタイムマシンに乗る「あいつ」なのかも分からないし、発明キッドの「あいつ」が誰なのかも分からない。これらの人物が明確に結びつかないことは、この曲全体の中で連続する時間軸が明確に形成されていないことが原因であることが考えられる。つまり、「過去のわたし」があり、その結果として「現在のわたし」があるという流れがないのだ。最後の段落においても、時間軸は全く分からない。

あれ? あれ? いきなり脳卒中
わたし年がら年中 貝殻集めて歩くの 由比ヶ浜
ふた ふた 二人が急接近したあの日から
貝殻集めて歩くのやめました

2つの前段より未来なのか、過去なのか。脳卒中になったのは誰なのか。「二人が急接近したあの日」はいつなのか。なぜ、貝殻を集めて歩くのをやめたのか。どれもが、はっきりとは分からない。このように、時間軸が崩壊することで、人物の明確性も失われ、全く物語世界の理解が進まず、感情移入が出来ない状況になってしまう。

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