第2章 浅野いにお漫画における感情移入

前章で導いた感情移入発生のプロセスにおける、「人物像の明確性」、「時間の連続性」、「世界の日常性」という3つの観点は漫画においても当てはまるだろう。それは、漫画評論家の伊藤剛も語っている。

コマの連なりからなるまんがを読む際、私たちは程度の差こそあれ、感情移入を行っている。そこには時間的な連続があり、エピソードが記述され、場合によっては、言葉で説明される「内面」さえ存在する。キャラ単体の絵が、たとえ「記号絵」であったとしても、それがコマの連続で記述され、ひとつひとつ異なった絵の描かれたどのコマを見ても「これは誰それだ」という判断ができる状態にあるとき、私たちははじめてまんがを「読める」。言い換えれば、じゅうぶんに感情移入をはじめることができる(※8)

以上を元にし、浅野いにおがどのように自身の漫画に感情移入する仕組みを用いているのかを考察していく。今回は、『素晴らしい世界』、『ひかりのまち』、『ソラニン』、『おやすみプンプン』、『世界の終わりと夜明け前』の5作品を分析対象とする。

脚注

※8 伊藤剛(2007)『マンガは変わる-“マンガ語り”から“マンガ論”へ』青土社 p113

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