第2章 / 第2節 想像の余地を創り出した『おやすみプンプン』

『おやすみプンプン』は、鳩サブレのような、子どもの落書きのようなビジュアルをしたプンプンこと、プン山プンプンの、小学5年生から始まるどこにでもあるような普通のライフストーリーを描いた作品である。2007年より『週刊ヤングサンデー』にて連載を開始し、同誌の休刊により、2008年からは『ビッグコミックスピリッツ』にて連載を開始した。現在も連載は続いており、単行本7巻まで刊行され、累計150万部を突破している。今までの作品とは異なり、単行本の帯には、伊坂幸太郎、RIP SLYME、銀杏ボーイズ、羽海野チカ、サンボマスター、瑛太、水川あさみなど、様々な分野の有名人からのコメントが掲載されており、今までのアンダーグラウンドなイメージからの脱却を果たし、よりメジャーな認知を得たことが考えられる。その中でも、2巻に寄せられた、現代を代表する小説家である、伊坂幸太郎によるコメントは、卓越した浅野いにおのセンスを、的確に言い表しているだろう。

浅野いにおさんは、メインストリームと前衛のどちらへ進もうか悩んだ結果、「前衛でありつつ王道を走り抜ける」という凄いことをやろうとしているような気がします。センスと技術が図抜けているので、何だか易々とこなしているように見えるけれど、たぶん、誰も真似ができない(※23)

また、平成21年度(第13回)文化庁メディア芸術祭(※24)において審査委員会推薦作品にも選ばれている。文化庁メディア芸術祭とは、メディア芸術の創造とその発展を図ることを目的とし、平成9年度から毎年実施されているイベントである。主催は、文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁・国立新美術館・CG-ARTS協会)であり、アート、エンターテインメント、アニメーション、マンガなど、優れたメディア芸術作品を顕彰するとともに、 これを鑑賞する機会として始められた。そんな由緒あるイベントにおいて、なぜ、『おやすみプンプン』が審査委員会推薦作品に選出されたか等のコメントはなかったが、作品の講評が掲載されていたので引用してみよう。

父は蒸発、母は入院。残された少年の名前は「プンプン」。これは、ある街のあるフツーの少年の成長物語。主人公は落書きのような姿だが、なぜか読む者の心を激しく揺さぶる。シュールなおかしみとひりつくようなリアリズムが絶妙なバランスで共存し、かつてない感動を呼び起こす衝撃の悲喜劇(※25)

ここで気になる文言がある。「主人公は落書きのような姿だが、なぜか読む者の心を激しく揺さぶる」という文言――それは、浅野いにおの作品が感情移入を生み出し、読者の元に確かに届いたということを社会的に証明した1つの結果であろう。

脚注

※23 浅野いにお(2007)『おやすみプンプン』小学館 単行本2巻の帯より引用
※24 平成21年度(第13回)文化庁メディア芸術祭
    http://plaza.bunka.go.jp/festival/2009/outline/
※25 審査委員会推薦作品 : マンガ部門
    http://plaza.bunka.go.jp/festival/2009/recommend/manga.php

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